『慟哭』

『慟哭』(作/貫井徳郎


※未読の方はお読みにならないでください!


難航する連続幼女誘拐事件の捜査に焦れる社会の「狂騒」に打たれる捜査一課長、佐伯の「苦悩」と、救いが得られないという空虚感に苛まれる「彼」が「宗教」にはまり狂気に蝕まれる「過程」とが交互に開示され展開される濃密な「ミステリ」。


たしかにグイグイと引きつけられて頁をめくる手が止まらないのですが、加害者と被害者の名前を秘することがすなわち「著者が読者に仕掛ける罠」であることは明白ですから、そこからミステリ的で衝撃的な結末は何かと想像すると、佐伯=「彼」しかありえませんわね。
ううん。あまり「仰天」できなくて哀しかったです。
ミステリは結末の予想を組み立てたりしないで読む方が楽しいに決まっているのに……。