北村薫作品に関する一考察

『盤上の敵』を未読の方はお読みになられませんように……。


最初にお断りしたいのは、そらけいさまの考えに基本的に同意してます。
ただし、その流れで〈例えば〉と「盤上の敵」(作/北村薫)を挙げられるのは不本意なので拙い筆なので躊躇しつつ書かせていただきました。


夕貴子のトラウマの原因は、一過性の「レイプ」ではなく、(夕貴子と同じ女性の)兵頭三季による直接的あるいは間接的な(「レイプ」を含む)「虐め」……始まりの切欠が何かも分からず、ただ断続的に繰り返される、執拗で粘着質的で巧妙な「虐め」(というよりも「暴行」が近似なのかも)です。


このように考えた理由は以下の通り。


①夕貴子の「精神」が壊れたのは、「レイプ」事件の喧騒の後、心労で母親が死亡後、飼犬の「クッキー」が兵頭三季に絞殺された瞬間であるという点。
②数年後、夕貴子は男性である末永と恋愛をし、結婚している。少なくとも「男性」一般を「恐怖」の対象と認識しないまでに「傷」は回復している。
③夕貴子が回復しつつあることを知り、兵頭三季が彼女の眼前に姿を現す、悪意を剥き出しにして。夕貴子は再び壊れる。