『青空の卵』

『青空の卵』(作/坂木司
一言でいうと、なんともストレートというか、青臭いというか、かなり苦手な物語でした。
感動させようとするエピソードが山盛りなんですけど、ぜんぜん届いてこない。
登場人物が口にする台詞は一切、響いてこない。
そして最悪な印象を抱いたのは物語の語り手、「坂木司」。
全編を通して男性キャラ全員にリアリティを感じないのですが、特に「坂木司」の頭の中身が全て正論。行動が道徳的。これを自分語りの物語で包み隠さず堂々と、微塵の照れもなく書き連ねる感覚が信じられません。
それに時々「あなた、何々だと思わないですか」みたいなテキストが挿入されるのにはほとほと困りました。
なんでわたし(読者)に語りかけてくる? 啓蒙したいの? 念を押さなくてもこちらはちゃんと考えているよ!
それから、そんなイイ子ちゃんキャラの「坂木司」が「ある事件」でとち狂い、関係のない(というか善意の)小宮巡査に切れる場面(253頁)が、もの凄く不快でした(正直、本を叩きつけようかと思いました)。


ミステリとしては及第点だと思います。いや、もうどうでもいい感じ。わたしはこの著者の作品、読まないから。